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エダンズのイサ博士が解説

分析対象拡大でリサーチクエスチョン誕生!
電磁場がハチと自然界に与える影響とは?

Quicktakes エピソード003

研究者であれば誰でも、一度は良いリサーチクエスチョンが見つからず悩んだことがあるのではないでしょうか?しかし、既に研究し尽くされているように見える分野でも、分析対象を拡大することで新たなリサーチクエスチョンが見つかることもあります。

この記事では、電磁場とハチの受粉活動、自然界への影響を検証したエキサイティングな論文の紹介を通じて、新たなリサーチクエスチョンを生み出すためのTipsをエダンズのエキスパート、イサ博士が解説します。

最新研究をオリジナル動画で解説!

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00:00:電磁場が与えるミツバチの影響

430:43:ミツバチの行動を分析するための様々な指標

580:58:電磁場は植物にも影響を与える?

2103:30:この研究のインパクトは?

人工的な電磁場がハチの受粉効率に与える影響は?生命科学の最新研究をエダンズの専門家が解説

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解説のポイント

  • 電磁場が与えるミツバチの活動への影響
  • 電磁場が与える自然界への影響
  • ミツバチの行動を分析するための指標
  • 既存研究から新しいリサーチクエスチョンを生み出すコツ

この研究の背景は?

ミツバチの活動と電磁場の関係性

ミツバチは花から花へ移動することで植物の受粉を助けることは広く知られていますが、実は、餌を探す、巣に帰還するなどの一連のプロセスは、地球が持つ電磁場に基づいて行われています。

近年、電力塔や携帯電話の使用などにより、地球の電磁場とは異なる人工的な電磁場が増加しており、これらがミツバチの受粉活動に与える影響が懸念されています。また、電磁場が植物に対して与える影響については研究が進んでおらず、謎に包まれたままでした。

今回ご紹介する論文「Electromagnetic fields disrupt the pollination service by honeybees」は、この問題の核心に迫る非常に興味深いものになっています。

エキサイティングな研究手法・結果とは?

人工的な電磁場はミツバチの受粉活動に悪影響を与える

論文の研究チームは、野外および実験室で実験を行い、人工的な電磁場への曝露がミツバチの採餌能力に影響を与え、生理的ストレスを引き起こすことを発見しました。これは、熱ショックタンパク質や抗酸化活性に関わる遺伝子の発現亢進として現れています。

また、人工的な電磁場への曝露は、ミツバチの行動に関連する遺伝子の発現レベルを低下させることもわかりました。これは、電磁場がミツバチの巣内・巣外の労働の切り替わりの時間に影響し、加えて長期記憶形成、磁気探知能力、運動能力にも障害を与える可能性があります。

実験の結果、電磁場周辺では花が多い場合でもミツバチが訪れる回数が減少し、電磁場が弱ければ花が少なくとも観測されるミツバチの数が多くなりました。この実験結果は、ミツバチの受粉活動に対する人工的な電磁場の影響が非常に強いことを意味しています。

人工的な電磁場は自然界にも悪影響を与える?

この研究からは、もう一つ非常に興味深い結果が得られました。それが、種子生産量の減少です。この結果の説明として考えられるのが、「人工的な電磁場の影響によって、自然の受粉媒介者であるミツバチの訪問が減少するため、種子生産量が減少する」というものです。

そこで研究チームは、ミツバチによる受粉と人工的な受粉で種子生産量に違いが生じるかを測定しました。その結果、受粉がミツバチのみによって行われた場合、種子生産量が減少することが分かりました。すなわち、「人工的な電磁場はミツバチの活動に対する影響を介して植物の繁殖と多様性にも影響を及ぼし、ひいては植物に依存する他の生物にも連鎖的な影響を及ぼす可能性がある」ということが示唆されたということになります。

専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト

電磁場と自然界の関係性を見つめ直すきっかけに

イサは、「この論文は、人工的な電磁場が受粉行動や分子レベルの変化に至るまでミツバチを混乱させる原因となることについて、決定的な証拠を示している」としてこの研究を評価しています。また、「この研究結果により、電磁場がミツバチに与える影響のメカニズムの全貌が明らかになり、電磁場への曝露の長期的影響に関する理解が深まることが期待される」と述べています。


エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!

既に研究されているトピックも発想を変えれば、エキサイティングな研究に

今回の研究は、電磁場がハチの活動に与える影響という既に知られている分野の研究でした。この研究をユニークなものにしたのは、以下の点によるものと言えます。

  • ハチの分子レベルの変化まで検証している点
  • ハチの活動を媒介した、電磁場の植物への影響

したがって、発想や検証アイデア次第では、既に研究しつくされた様に見える分野からも新しい研究が生まれる可能性があるのです。 アイデアを生み出すためのアプローチについては、こちらもご参照ください。

いかがでしたか? 今回は、電磁場とミツバチの活動・自然界との関係に関する面白い研究を、エダンズのエキスパート、イサ・マックが解説しました。今後も興味深い研究について発信を続けていきますので、お楽しみに! アイデアを生み出すためのアプローチについては、こちらもご参照ください。

エキスパートが独自の視点で選んだ、エキサイティングな研究をご紹介!

著者
Molina-Montenegro et al.
出版年
2023
掲載誌
Science Advances

研究者・著者の皆さまを、全力でサポートします

エダンズは、皆様が取り組む研究分野における研究のギャップを見つけだし、論文の校正、最適なジャーナル選択、そして研究の影響力を最大限に高めるためのコンテンツ作成まで、研究の全サイクルで一貫したサポートを提供します。

エダンズ・エキスパートのご紹介

Isa Mack(イサ・マック)

東京大学大学院総合生命科学研究科博士課程修了。ガスクロマトグラフィー質量分析、核磁気共鳴、様々なプログラミングツールを用いた大規模データセットの処理経験を持つ。エダンズでは専門知識を活かし、研究者の論文執筆や出版をサポート中。

他のエキスパートのコメント

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スコット博士

この論文を読むまで電磁場の影響はないと思っていたので、研究者たちが実験してくれたことに感謝しています。残念ながら、いくつかのニュース記事は結果を誤解し、センセーショナルに伝えてしまっていますね。

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ピーター博士

私の専門分野ではありませんが、この解説は楽しく拝見しました。多くの国でミツバチの数が減っていることが懸念されているので、ミツバチの話題はとても重要です。その点でこの研究は興味深い点を提起していると言えますね。ミツバチの数だけでなく、他の要因もミツバチの働きぶりに影響を与える可能性があるということがわかりました。

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ティナ博士

ミツバチの遺伝子とプロテインA発現というミクロな領域から、ミツバチの受粉行動とその後の植物量というマクロな領域まで、この研究の包括的なスコープには感銘を受けました。実験室やフィールドでの研究はだけでは、多くの疑問が解決されないことが多いです。うまく設計された手法を複数用いることで、研究対象のプロセスをより統合的に捉えるためのデータを提供することができます。

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